ファンド選びのコツ~目論見書・月次レポートの読み方
ファンド(投資信託)を購入する時、雑誌やSNSでこれを買っておけば良いと書かれているものを何も考えずにそのまま買ってしまう投資初心者の方も結構多いようです。
俗に言う、「ツミにーでオルカン(つみたてNISAでeMAXIS Slim 全世界株式 オール・カントリー)」」といったようなもの。
ツミにーでオルカンを購入するのがいけないと言っているわけでなく、つみたてNISAとはどういう制度なのか?eMAXIS Slim 全世界株式 オール・カントリーはなぜ、投資初心者におすすめされているのか。
各制度や金融商品の内容をしっかり理解した上で、購入する必要があるでしょう。
総資産が1億円ある方と100万円ある方では適した金融商品は異なりますし、投資初心者と投資のプロでもそう。
NISAやつみたてNISAといった制度に関してはまた後日説明させて頂きますが、今回はファンド編。
ファンド(投資信託)を購入する際に確認すべきものは、ファンド会社の公式サイト上で確認できる目論見書と月次レポートです。
資料名 | 概要 |
---|---|
目論見書 | 投資信託の説明書。 |
月次レポート | ファンドの最新情報(運用成績・投資先) |
可能であれば、上記2つの資料に関しては隅から隅まで読み込むことをおすすめしますが、投資経験が浅い場合資料を読んでも理解できない、または資料の内容の妥当性が判断できないという方も実際は多いのではないでしょうか。
そこで今回、以下目論見書と月次レポート内の情報の中でも特に注目し読み込みたい項目と、読み込む際の理解を助ける情報をまとめました。
お手元に気になるファンドの目論見書と月次レポートを用意し、確認しながら見ていくとわかりやすいですよ。
目論見書と月次レポートに関しては、ファンド運用・販売会社のサイト上で見つけることができます。
目論見書編
まずは、ファンドの説明書とも言える目論見書。
1、ファンドの目的・特色
ファンドの目論見書を読むことで、そのファンドがどのようなファンドなのかその概要を理解することが出来ます。
以下、 目論見書内ファンド最上部に位置する「ファンドの目的・特色」の項目で投資初心者がひっかかりやすいポイントをまとめます。
ベンチマークについて
ベンチマークとは、そのファンドが運用の指標としている競争相手のことです。
例えば日本を代表する225社の株式の平均株価である 日経平均株価をベンチマークとして設定しているファンドであれば、同時期に日経平均株価が10%上昇したら同様に10%上昇できるようにファンド運用を行うというものです。
ベンチマークを確認することで、新設ファンドでまだ運用成績のデータが溜まっていないファンドでも過去の指標の数字からファンドの今後の値動きをイメージできたり、
また、ファンドの運用成績がしっかりベンチマークについていけているかを確認することで、投資初心者でも容易にファンド運用者の運用手腕を推し量ることが出来ます。
引用:ニッセイアセットマネジメント 購入・換金手数料なし ニッセイTOPIXインデックスファンド
為替ヘッジについて
ファンドによっては、 為替ヘッジあり・なしの商品があります。
海外に投資するファンドの場合、外貨での運用が行われることがあります。その場合、購入時や売却時に為替レートがファンドの価格に影響することがあるのです。
そこで、 為替ヘッジありのファンドでは為替レートによるファンド価値の毀損を抑えるために、 ヘッジコストという保険料を払い事前に保険を掛けておくことがあります。
・円高による差損を抑えることが出来る
・円安になった時にはその恩恵を受けられない
・ヘッジコスト(保険料)を支払う必要がある
ヘッジコスト(保険料)は、長期になればなるほど大きくなります。長期投資を検討する場合は、対象通貨の過去の為替レートを確認し必要の可否を吟味したいですね。
2、ファンドの仕組みについて
ファンドの仕組みの紹介項目でよく出てくるのが、以下「ファンズ・オブファンズ方式」「ファミリーファンド方式」という2つの言葉。
ファンドを通して、全く別のファンドに投資する形態。
さまざまな運用会社が運用する複数ファンドに分散投資でき、状況に応じて投資先ファンドの変更も出来るのはメリットですね。
しかし、投資先は別運用会社のファンドとなることが多く、投資先ファンドごとに運用や事務手続きのコスト負担が発生します。
ファンドの仕組みが複雑になればなるほど、見えない手数料に気づかず投資コストがかさんでしまっていることも考えられます。
ファンドの形態を理解するのは勿論のこと、コストとリターンを比較し支払う手数料の妥当性を判断したいですね。
投資先ファンドが同じでも、為替ヘッジあり・なし、分配金あり・なしと言った違いにより商品を分けて販売している場合があります。
ファミリーファンド方式のファンドの場合は、上記のような違いで商品管理上複数に分かれたベビーファンドに集まった資産をマザーファンドへ投資し、マザーファンドから株式や債券などに投資する仕組みとなっています。
基本的にマザーファンドとベビーファンドの運用会社は同じなので、マザーファンドに対するコスト負担はありません。
どちら良いということはなく、ご自身の投資したい商品や希望する分散度合い、許容できる投資コストに合わせて上手に選択したいです。
3、分配方針について
分配金とは、運用によって得られた利益を決算ごとに投資者に分配するお金のことです。
しかし、全てのファンド(投資信託)で分配金が出るわけでありません。以下、ファンドにおける分配金の種類をまとめてみました。
分配金は支払われません(=投資で得た利益はそのまま投資元本に組み込まれ運用が続けられる)。
決算期ごとに分配金を一度受け取った(ことにして)、そのまま再投資を行うタイプ。再投資の場合でも税金面では一度受け取った扱いになり、再投資するたびに税金がかかります。
決算期ごとに分配金を受け取るタイプ。ここで知っておきたいのが、分配金には「普通分配金」と「特別分配金」の2種類があります。
普通分配金は、運用によって得られた利益を投資者に支払うタイプのもの。恐らく、多くの投資者の方がイメージされる分配金のイメージでしょう。
そして、ぜひ理解しておきたいのが残りの特別分配金。
特別分配金は運用で得た利益でなく、元本の一部を削って捻出したお金を分配金として投資者に戻すものです。
よって、特別分配金は運用でマイナスが出ても貰えます。貰えると言うより、アンパンマンの顔を分け与えるように、投資した商品の一部をただそのまま投資者へ返還しているという意味合いですね。
毎月分配をうたうファンドなどは、毎月分配金がお小遣いのように貰えるといったうたい文句でいかにも儲かる商品のように販売されることもありますが、場合によってはただ投資したお金が少しずつ返還されている可能性があることは忘れてはいけません。
また、100万円を投資して1%のリターンが得られれば1,000万円の利益、1万円の投資であれば100円の利益。投資においては元本が大きければ大きいほど、効率的な運用ができるのですよね。
投資で得た利益を受け取らずに再度投資に回し、資産をごろごろ雪だるま方式に増やしていくことも長期的に見たらお得な可能性もありますよ。
4、投資制限について
ファンドの投資制限とは、ファンドが投資できる金融商品や比率の上限など守るべき制限のことです。
特に「デリバティブ(先物・オプション)」のような、比較的ハイリスクな運用方法の使用方針や制限については確認しておきたいです。
デリバティブとは債券や金・穀物など様々な商品の未来を予測し、事前に決めた価格で取引を行うこと。
1年後に100円で取引をする約束をして、1年後に1000円に取引価格が上昇していたら900円の利益が出ますね。
未来のとある時点での取引価格をピンポイントで予想するのは困難である点、かつ現資金を担保に資金の借り入れを行い元本以上のトレードを行うことが多い点から比較的ハイリスク・ハイリターンの金融商品として知られています。
運用レポート編
目論見書でファンドの概要を理解した後は、毎月の運用状況を知ることが出来る運用レポート(月報)を見ていきましょう。
1、時価総額の推移
ファンドの時価総額とは、ファンドに集まった資産の合計金額のこと。時価総額の増減は、運用状況だけでなくどれくらいの顧客が集まったかにも左右されます。
・ファンドの運用がうまく行かず、価値が大きく毀損された
・運用成績不調や先行きの怪しさから、投資者離れが起きている
・知名度の向上などから、投資者が爆発的に増えている
・ファンドの運用が急激に上手くいっている
時価総額は多ければ多いほど良いというわけでなく、急激な投資者増加により資金が集まりすぎて予定していた戦略での運用ができなくなったり、資産額の超過により運用が停止され繰上償還されることもあります。
特にリスクが取れない方は、時価総額は緩やかに右肩上がり、または一定を維持しているファンドを選ぶと良いでしょう。
2、基準価格の推移・騰落率
基準価格とは、ファンド(投資信託)ひと口当たりの価値のことを指します。
基準価格を見るにあたり理解しておきたいのが、リスクとリターンの関係性。投資において、リスクとリターンは比例関係にあります。
過去10年間の間、年50%のリターンを毎年かかさず出し続けているファンドがあれば別ですが、基本的には50%のリターンを出せたファンドは同時に50%の損失が出ていた可能性を含みます。
基準価格は、最低5~10年の長期での動きを見ること。
また、いくら直近で魅力的なリターンが出ていても、あまりにも急激な価格上昇であったり、価格のブレが激しいファンドに関しては冷静に投資の可否を考える必要があるでしょう。
年利50%のファンドに飛びつき、翌年マイナス50%でフィニッシュされたら目も当てられません。
3、分配金
分配金ありのファンドを選んだ場合は、過去分配金がどれくらい出ているかを確認しておきたいですね。
しかし、先述したとおり分配金の受け取りの有無に関しては今一度考える必要があると言えるでしょう。
4、投資状況・比率
投資商品や投資国、組入銘柄などに関しても一通り目を通しておくと良いでしょう。
投資商品に関して、先物などハイリスク商品への比率が高いものや、逆に割高な手数料が発生しているにも関わらず、運用の手間がかからない現金や債券など非リスク資産の割合が高いものも考えものです。
投資国、組入銘柄などに関してもファンドの種類によりますが、必要以上に偏りがないかしっかりと確認しておけると良いでしょう。
どんなファンドを選ぶ必要があるのか?
ここまで、ファンド(投資信託)の目論見書・月次レポートの読み方についてまとめてきました。
本来であれば、結びとしてこのようなファンドを選ぶべきだという結論を示すべきですがあえて示しません。
なぜなら、適切な金融商品は投資者の経済状況、ライフステージ、投資ポリシーによって異なるからです。
まずは、上記の内容を踏まえ、出来るだけ多くのファンドを理解しご自身との相性を確認するのが良いファンド選びへの近道と言えるでしょう。
複数ファンドの目論見書・運用レポートを見ていると、これだ!というファンドにきっと出会えるはずです。
是非、ファンドへの投資をお考えの方はまずご自身の興味のあるファンドの目論見書・運用レポートをのんびり読み込んでみることをおすすめします。
本レポートが、皆様の資産運用のお役に立ちましたら幸いです。
両国ファンド研究会 藤田良 2021.06.16
寄稿者:藤田 良(blog/twitter)
投資歴:9年(執筆時点)
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